ROM(Reduced Oder Model)は、モデルの一部または全部を低次元なものに縮約されたモデルをいいます。縮約の方法は様々ですが、主には入出力の関係性のみをモデル化する方法とモデルの持つ自由度を座標転換等により低減する方法の2種類があります。ここでは、前者について、特にAI・機械学習手法を活用したROMについて紹介します。
静的な問題に対しては、応答局面法やニューラルネットワークを用いてモデル化されますが、動的な問題に対しては時間的な推移が重要となるため、RNN(Recurrent Neural Network)等の手法が用いられます。
- ROMは、以下の様な用途で用いられます。
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CAEモデルの高速化
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HILS結合のためのリアルタイムモデルの構築
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異なるCAEソルバー間の連成解析
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テストデータとCAEの結合
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非線形コンポーネントのROM
- 機構解析などのCAEで非線形コンポーネントをモデル化する際には、以下の様な課題があります。
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複雑な非線形特性を表現するためのモデル化技術
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システム解析における計算時間
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非線形コンポーネントとしては、剛性や減衰要素・フリクションなどの材料非線形性、接触などの幾何学的非線形が考えられますが、いずれにしても荷重に対する変位・速度(周波数)依存性として捉えられる問題に対しては、ROMの活用が有効です。
動的な問題に対してROMを適用する場合、LSTM(Long Sort Term Memory)等を用います。それは、例えば自由振動の様にある瞬間では外力が加わらなくても変位・速度が発生する現象を表現するためには、モデルに過去の履歴を記憶させる機能が求められるからです。さらには、その記憶の長短や重要性を考慮(低周波であればより長く影響を及ぼします)できるモデルが望ましいです。
実験またはCAEでコンポーネントの入出力の関係(変位・速度と荷重)を取得し、モデル化することにより、システムシミュレーションと連携することができます。

リアルタイムシミュレーションのためのROM
HILSやドライビングシミュレーターに搭載する車両モデルはにはリアルタイム性が求められるため、その自由度には制限があります。弾性体や非線形特性を含む車両モデルの自由度を一切低減させることなく、ROMに変換することによりリアルタイム性を確保することができます。
図は、1,000自由度以上でフリクションや弾性体を含むAdams/CARモデルをLSTMとGRU(Gated Recurrent Unit)の2つの手法を適用することでROMを構築した事例です。
ここで、インプットはドライバの操作量、アウトプットは車両挙動となります。いずれの手法も、リアルタイムの3~4倍程度の速度でかつ、車両挙動を精度よく縮約できていることを示しています。
